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buonasera
山地です。
今フィレンツェではPITTI真っ最中ですね。
昨年の今頃は、石畳が隆起しすぎてるがあまり、馬に踏み潰された石畳にめり込んでいる鳥を見下ろしながら太陽の下でスプマンテとパスタに舌鼓を打ってました。
次もフィレンツェは行くとして、やっぱりナポリにも行ってみたいです。どのくらい落書きとゴミに溢れているのか見てみたいです(笑)勿論シャツやスーツも見ます。DePetrilloってナポリで見られるんですかね?どなたか教えてください。
さてさて、先日札幌より服部巧君が研修に来ておりました。病み上がりで血でも吐くんじゃないかと心配になるほどむせ込んでましたが魂は熱く滾らせながら仕事に没頭しておりました。
札幌店であるTHE LOUNGE by Brift Hも元気に営業しております。
勿論ソール交換などの修理、キズ補修やWET cleaningなどの特殊施術系も承っておりますので、北海道在住の方は是非ご利用下さい。
インスタグラムでも札幌在住でとてもオシャレな方を多くお見かけします。靴のトラブルに関しては、服部くんが力になってくれるので、イケメンに会える靴磨き屋ということで女性も是非ご利用下さいませ。
それでは今週の本題!
超絶技巧!うちでも滅多にないスペシャルな修理をご紹介します。
こちら!
ZINTALA
いや〜最近FATTO A MANO の靴のご依頼が多くて毎週ウキウキな山地です。皆様ありがとうございます。ローマ靴やフィレンツェ靴が拝められると脳内エンドルフィンの分泌量が凄まじいです。
こちらのZINTALA、シボ革で激渋い面構え。しかもノルウィージャン製法。極め付けはウェルトのスタート位置です。ウエストよりかなり前側にのみ配置されています。不思議なつくり。
ソールに穴が開いていたので、オールソール交換のご依頼を頂きました。
が!しかし!出し縫いのピッチが激細い。しかもウェルトの位置が見たこと無い位置から始まっている。ダブルソールですし、これマシンで縫えるかな?と疑問だったので預かり、お見積もりになりました。
拝見したところ、職人も見たことがない珍しいウェルトだと言ってました。
マシンでは針穴は到底追い切れない。いや、縫えない事もないが、無理矢理針穴を開けることになるので、ウェルトが傷む可能性を考えると止めておいたほうが賢明という答えに至りました。
ということで!針穴を完全に追うためにハンドで縫う方法で補修したオールソールがこちらでした。
ピッチ細かい!修理後のほうが細かさがより一層わかります。
手作業感が伝わって非常にカッコいいですね!イタリア、ローマらしい顔つきに思わず顔がにやけます。一針一針しっかり引き込んでいるのが伝わってきます。こういった職人による手の仕事がたまらないと思った貴方、かなりの玄人です。
オールソール+ハンドの出し縫い
料金:ASK
納期:お見積もり期間含めて大体1ヶ月〜スタート
(今回の金額は¥33,000+tax)
ちなみに!グッドイヤー製法だからオールソールが何度でもできると言われていますが、できれば現状付いているソールは無理に交換しない方が賢明な事があります。”現状維持”に越したことはないという場合もあります。
というのも、オールソールすればするほど、言ってみれば縫いをかけるほどウェルトの針穴が傷んでしまいます。マシンはある程度針穴を追ってはくれますが、勿論追い切れない事もあるので無理矢理針穴を作ったり広げたりする恐れが多々あります。
オールソール交換にとって、ウェルトの針穴が死んでいないかどうかは非常に重要な要素です。爪先をぶつけまくったり、修理屋さんがやたらとバフってコバを攻めてしまえば針穴がコバ断面に近づいてしまいます。
ちなみに下の写真は針穴がほぼ死にかけています。この場合は、完全に針穴が外に飛び出してしまってますね。
これでは縫えません。
こうなったら”リウェルト”という修理方法があります。アッパーとソールを繋ぐためのウェルトを新しいものに交換しましょう。
ただ、ウェルト交換すれば少しコバの張り出しがゴツくなったりもしますし、グッドイヤーなのにリウェルトできない靴も実際にあったりはします。要相談!その場ではできるかどうか判断できない場合もありますので、お預かり期間が長くなる可能性があります。
ちなみに、下の写真の靴はギリギリ縫えます。縫えますが、今後ぶつけたり削れたりすると徐々に針穴の寿命が縮んできますね。
皆様も、お持ちの靴の出し縫いをご確認頂ければと思います。
針穴は生きていても、雨の日に履くほどウェルトがバサついて縫いに耐えられない状態になることもあります。これはウェルトの革質も関わってきますね。繊維密度が低いとバサつきやすいです。
我々はオールソールをご依頼頂く際、お客様にとって靴にとってBETTERな方法をご提案致します。
納期やご料金が許容範囲内か、靴がオールソールを耐え切れるかどうか、ハーフラバーやハーフレザーの方が賢明かもしれないといった、あらゆる視点から見て一番いい方法でご提案致します。勿論分解してみて、急遽+αの施術が必要な場合もありますので予めご了承頂ければ幸いです。
なにはともあれ、正真正銘のフルハンドの靴になりましたね。しかもアッパーがめちゃくちゃ滑らかで、シボなのに驚くほど磨きやすく、非常に楽しかったです。高額なだけに良い靴です。
個人的に既製品で手作業が駆使された物ほど贅沢品だと思っております。
ビスポークもフルハンドは今となっては必要事項となっておりますが、生産性が問われる既製品で手間と時間が大幅にかかる手作業が随所に見られるなんて、これほどドラマティックな事はありません。menswear、紳士の嗜好品においてロマンを感じずにはいられません。
ちなみに手縫いだから良いとよく言っている方がいらっしゃいますが、洋服においても靴においても手縫いにはメリット/デメリットがあります。
時間と手間がかかるので、必然的にコストがかかる。ピッチを細くしたり意図的に荒くしたりできるので可動範囲を考慮した作りができるが、やはり手作業なので少し弱いです。洋服だとほつれやすいですね。
ボタンもボタンホールもハンドは柔らかいけどすぐ解けやすかったりします。
靴も、出し縫いはハンドでもマシンでも強度は変わりないという意見もよく聴きます。九分、九分半、フルハンド、どれも時間と手間が違うだけなんかも耳にします。
それでも、手縫いでしか成し得ない着心地、履き心地があるわけです。そして手作業でしか表せない美しさがあるわけです。
靴で言えばベベルドウエスト、フィドルバック。こんなに攻め込まれたセクシーなウエストはマシンでは表現できません。そしてハンドソーンだからこそ実現できる湾曲した沈み方により、唯一無二の履き心地になる。フルハンドの靴は憧れです。
シャツだってジャケットだってパンツだって、解けたりシームが開いたりと色々ありますが、個人的にはそれがめちゃくちゃ楚々られるのです。紛れもなく職人が時間をかけて一針一針を技術を駆使して縫っているというドラマティックなバックボーンが感じられます。
話が大きく逸れましたが、イタリア、イギリスを中心としたメンズのクラシックファッションが今後世界的により注目されていくと思われます。
紳士靴業界の端くれの我々にとっても、とても興味深く、そして嬉しく思える傾向です。紳士服のドレスシーンがもっと盛り上がることを祈りたいです。
それでは、皆様のご来店、ご依頼をお待ちしております!
written by brift-h